レンアイゴッコ(仮)

「それで柑花ちゃんは、シノの何が気に入らなかったの？」

上手にできない。きっと何もかもが。

「…………です」

「うん？」

けれど。東雲の前では素直になれないけれど、佐々木さんの前では素直になれる。

「女の子に神対応したんです、私の目の前で！」

「おー、優しいじゃん」

そう、東雲は優しい。とても優しかった。素晴らしい心掛けだと褒めるべきだ。

でも……、

「柑花ちゃんは、それが嫌だったんだ」

そう、私はそれが嫌だった。

ずばりと言い当てられたのにあまり悔しくない。佐々木さんが爽やかに笑い飛ばすからだろうか。

「……なんでだろ」

「なんでだろうね〜」

佐々木さんはそう言って別のお客さんの接客に入った。

小籠包を乗せたレンゲを口に含む。いつもどおり美味しい、けど。

『美味しそうに食うのな』

そう言って私のお世話をする東雲と一緒に食べるほうが美味しいって、私はもうすっかり自覚している。