レンアイゴッコ(仮)
ダイエットとしては成功の腹八分目。ほんの少し心残りのある腹八分目。ご飯を楽しんだ私は、まるでそこが自分の家のように、あるマンションにたどりついた。

「…………え、何、」

ピンポンを鳴らすとゆったと扉が開き、現れた稀男は既に眼鏡のリラックスモードだった。

「泊めて」

不躾に強請ると東雲は少し戸惑いながらも「いいよ」と、頷いた。

でも、これは単純に私のわがままだけど、何も聞かずに受け入れてくれるのは、私だけであってほしい。

東雲は煩わしそうに手を伸ばして扉を開けている。いいよと言われたのに、私は東雲の腕と扉の間で動こうとはせず、東雲も私を急かさない。

「……東雲は、泊めてって言えば誰でも泊めるの」

「そんなわけない」

「褒めてって言えば誰でも褒めるの」

「……必要に応じて」

「私はいやよ」

俯いた。泣きそうになった。

「…………私は、いや」

無防備な東雲の胸にコツンと額を押し付け、もういちど、コツンと何度か頭突きをした。東雲の香りがもう懐かしい。

「……やな態度とってごめん」

肌触りの良い白いTシャツの裾を掴む。

東雲の手が私の背中を摩る。ぎこちなく、優しく。

「俺も、やな態度とらせてごめん」
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