レンアイゴッコ(仮)
「何はともあれ、や〜っと柑花の“最後の恋”の話が聞けそうで嬉しいよ」

桜雪が微笑む。

最後の恋?私にとって、東雲が?

──……いやいやいや、無いよ。無い無い。

「無いよ、無い」

きゅっと。ぎゅうっと。

自分の感情に蓋を閉めるみたいに栓を閉じた。

「何言ってんの。大学の友達にヤキモチ妬いてる時点で、ふか〜いとこまで落ちちゃってるでしょ」

「経験者は饒舌だな」

「あは、良かったー。今日、絃葉の奢りね?やったね柑花〜」

あっちゃ駄目なんだ。
虚しい戦いが始まるだけなんだ。

はじまっちゃ…………


「(……駄目だ)」


再確認する私を、両側から覗く瞳たち。

「あれあれえ?かんかん、顔赤いよ〜?」

「赤いねえ〜」

囃し立てる二人に「うっ……るさい」と、力なく告げて、顔を両手で隠した。隣で空気みたいな笑い声が聞こえる。桜雪のものだった。


「鈍感だからこそ柑花が気付いた時っていうのは、大体もう手遅れなんだよ」


……ああ、そうだ。

自分のことだ。

人に言われるよりも、自分がちゃんと理解している。
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