レンアイゴッコ(仮)
「あいつ?」

結びつく先が分からず、聞き返した。

「桐城のセッター。あいつ嫌い」

その高校は、高校時代、何度か練習試合の経験がある男子校だ。

「桐城?何かあったの?」

マネージャーをしていたからと言って、相手校の一人一人を覚えているほど記憶力は良くない。

「桐城と当たると大体俺が狙われんの。あのセッター、俺がマーク中のアタッカーしか使わねえの。ウザくね?」

けれども絃葉は違うようで、仔細に覚えているらしい。

「止めやすいじゃない。良い子ね?」

桜雪がグラスのオリーブをころんと転がしながら言うと、絃葉は右側で「どこが」とため息を出した。

「読みやすいけど、疲れる。俺がブロック入る、止めてもまたそいつを使う。俺がミスるか止めるかこれの繰り返し。一年だからって、舐めてるとしか思えなかったわあの三年。雑魚サーブしか打てんくせに」

「そうだったかなー……?」

「あいつ多分柑花に気がある感じだったから、それとなーく彼氏演出して牽制してたわ。ざまあ〜」

そして告げられる新事実に驚愕。

双子の弟、絃葉はどうしてこう性格が歪んでしまったのか。

確かに恋人同士だと間違われることも多かった。二卵生だから仕方ない。だからと言って、はい恋人ですと肯定する弟がどこにいる。この行動も、絃葉の性格の悪さから来ている。

黙っていれば王子と持て囃された結果か。特定の彼女を作らず、裏で女の子をつまみ食いしていたのも知っている。よって、弟の恋愛事情を聞くのは恐ろしい。

「ねえ、性格悪すぎん!?気持ち悪いことしないでよね!?」

「まあ昔のことだし。柑花の彼氏とは別人だろ」

だとしても、気色悪いには変わりない。
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