レンアイゴッコ(仮)
「…………え、なんで?」


───だから、私は困惑したのだ。


家に帰りついてあまり時間は経過していなかった。

変に距離を歩いたから、くたくたの足をやっと解放させて、気力はもう残されていなかった。

身体へのお詫びとしてもう一本飲むなら、今からにするかそれともお風呂上がりにするかなあ、それより先に、足のマッサージしなきゃな……。

なんて呑気に考えていた矢先、玄関のチャイムがピンポンと陽気に鳴いたのだ。

なんだろ、と、重たい腰で立ち上がり、モニターで確認すると、画面越しでもダウナーな雰囲気が伝わる東雲が立っていた。

急いで玄関の扉を開け、どうして、と訊ねた。

私がなにかしたのか。

地雷でも踏んだのか、電話が駄目だったのか、面倒だと思われたのか。

ありとあらゆる嫌な可能性を探す私に対して、東雲の答えはシンプルなものだった。


「彼女に会いたいって言われたら、来るよ」


東雲にとっての当たり前が、私の涙腺を刺激した。
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