レンアイゴッコ(仮)
「そうなんだ。高三は受験で忙しくなるもんね」
さすが、常にビックウェーブなモテ期をお持ちの東雲も、受験には勝てなかったのだろう。
「違うんだよ。片想いってやつ」
さらに落とされる、意外。
「(カタオモイ?)」
意外だけど、東雲らしいと言えば頷ける。
「東雲は昔から一途なんだね」
「まあそんな感じ」
「(納得した)」
黙っている東雲は綺麗。素直な東雲は可愛い。
様々な経験を経て今がある。私と同じ、東雲もたくさん回り道を経験してきたのだろう。高校生の東雲の片想いはどうだったのか、私は聞けなかった。
けれど東雲だって、恋が砕けるその度に泣いたり、傷ついていたのだろう。
「柑花ちゃんお待たせ〜!焼き小龍包だよ」
「わあ、いただきます!」
佐々木さんお手製の焼き小龍包をレンゲに乗せ、アツアツのうちにパクリと一口で頬張る。
「んんぅ……ひあわへ……!」
はふはふと息を吐きながらもちもちの皮と肉汁の美味しさを堪能し、ビールで熱を冷ます。ああ、至福である。
「火傷するなよ」
東雲は私のビールジョッキについた水滴を拭うから「分かってますよ」と、そう言ってもうひとつレンゲに乗せる。
「シノ、お前良かったな」
「まじで、雛鳥の巣立ちを見ている気分だわ」
「人間だよ」
莇さんと藤さんは東雲のことを大事に思ってくれているのだろう、終始嬉しそうにしていた。なぜ、こんなにも喜んでくれているその理由を、私はまだ知らない。