レンアイゴッコ(仮)
「仕事中も東雲のことばっかり考えるから仕事効率かなり悪いし、一人で飲み行こうと思っても何でか食欲無くなるし、女の子と一緒のこと考えてモヤモヤするし、居酒屋行ってたのになんでか引き返しちゃうし、」
「妃立」
ぽろぽろと零れていく気持ちを、静かな声が止めた。引き合うように見上げる。無機質な瞳は穏やかで、私の心も次第に落ち着いた。
「それ、俺のこと好きって言ってる?」
顔を覗き込まれて、ときめく心は恋心。
「そうだって言ったら……東雲は迷惑?」
質問を質問で返すと、東雲の無表情は崩れる。
普段、職場では絶対に見ることの無い笑顔。ミルクたっぷりのカフェラテみたいな、甘やかで優しい笑顔。
「嬉しい」
ああ、もう。
「すげえ嬉しい」
──……これで私のことが好きじゃなかったら、末代まで呪っても許されるんじゃない?
反論しようと言葉を脳内に並べた。けれども「あれ?妃立さんと東雲くん?」と、部長の声が届いたので、強制的にストップする。案の定、出入口付近に部長が立っていた。接待帰りに一度会社に立ち寄ったのだろう。
「二人とも何してるの?」
「や、えー……と」
ダラダラと冷や汗を流していれば「提出漏れがあったので呼び出しました」と、東雲が助け舟を渡すので「そうです!すみません!」と、すぐさまその話に乗る。
「そう。それはお疲れ様でした。気をつけてね」
「はい。お疲れ様です!」
二人揃って会社を後にした。