レンアイゴッコ(仮)
「うち人手足りてなくて大変なんだよ。柑花、うちに来る気無い?」

何を言われるかと思っていれば、到底頷けない言葉だった。アホなのか。

この男と別れた原因は、職場は違うから当たり前に抱えている仕事は違うのに、意見を求められることが多々あったのだ。

仕事とプライベートの区別がつかず、全く休めなかった彼との付き合いとは違い、東雲は残業をしてでも仕事は家には持ち帰らないし、付き合ってから、極力仕事の話はしない。

ほんの些細な変化。私にとって幸福の拠り所。

「行く筈無いでしょ」

早く東雲に会いたい。

職場も恋しい人と会える場所のひとつになるなんて、同期との恋愛も悪くない。たまにぶつかるけどさ?会社を出たらギスギスした空気、ゼロになっちゃうもん。

「そうだよな、Qbitも支店の方は全く人足りてないって聞くもんな〜」

彼がこっそりと耳打ちした。初耳の情報だった。

「そうなの?うちにそんな話来ないよ」

「信頼されて無いのでは?ということでうちに来ない?」

失礼すぎる。ていうかそもそも、どうして他社の社員が弊社の内部事情を知っているのか。
< 209 / 234 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop