レンアイゴッコ(仮)
制限されてしまったので焦って探したけれど、ちょうど帰宅ラッシュの時間帯と重なっていたため、二つ目の信号まで割と待ち時間があった。

どうやらその辺りも計算されていたらしい。抜かりのない男だ。

おかげで良い感じのお好み焼き屋を発見することに成功した。

「あ、あつ……!んん〜とろとろ〜!」

まさに、地元に愛された、と言うキャッチコピーが似合うお好み焼き屋は、出来上がりの熱々を提供してくれるタイプのお店だった。

ねばねば好きにはたまらない山芋たっぷりのお好み焼き。輝くソースの上にはたっぷりの鰹節と、青のりの代わりに刻み海苔、そしてなんと山葵が乗っている。ひと目で食欲がそそられたお好み焼きを、東雲も「いいね」と頷いてくれた。

東雲は素材がいいので着飾る必要もない。さらには、ちょっとレトロなお好み焼き屋も、東雲の清潔感によって高級フレンチ店にでもいるようだ。

見た目王子の風貌がお好み焼きを頬張る。

「うん。美味いな」

食べ方の所作も一々綺麗で、欠点がないのかと疑う。

「整骨院の定例会議の後はこのお好み焼き食べて帰ろうよ」

「二人でまた来れるか分かんねえっつの」

「そうなんだよな〜。部長に掛け合ってみようか」

「お好み焼き食べたいから二人で行かせてくださいって?」

「部長、絶対着いてくるやつじゃん」

「それは勘弁」

二人で同意していると、

「妃立、酒飲んでいいよ。飲みたいだろ」

なんて、東雲はお酒を進めてくる。
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