レンアイゴッコ(仮)
急遽組まれた会議はなんとか見積もり案もご納得いただけて、納期までのスケジュールも組めそうだ。けれども大幅な路線変更は余儀なくされてしまい、練り直す必要は認める。ただ、頓挫は何としても避けたい。

社用車に乗り込むと、報告のために東雲は会社に電話を入れた。喋る度に喉仏が上下する。あまりみると目に毒だと知っているため、腕時計を見る。時刻はもうすぐ18時、定時だ。予定よりも押してしまったらしい。


「今日は直帰で良いって、部長から」

「わー、有難い。帰っても今日はもう頭が働かないや」

「飯食って帰るか」

「大賛成。調べるね、何が食べたい?」

「俺、基本好き嫌い無いから妃立に合わせる」

「じゃあ、お好み焼きでいい?粉物食べたい!」

「良いよ」

食べたいものをや行きたい場所を、否定せずに受け入れてくれる人は貴重だと、この歳になるとよく分かる。

「いつも思うけど、素晴らしい特技だね」

ありがたいなあ、と賞賛に似たものを抱きながら、アプリを使ってお好み焼き屋を調べる。

「合わせる人は選んでるって言ったら?」

東雲が続けた言葉に、深い意味は受け取れない。

「そうだよね。東雲が鈴木と合わせるのなんか無理そうだもん」

「……伝わんないか」

「え?なにが?」

「早く調べて。出来れば二個先の信号までに」

「!ちょっと待って、今から本気だすから!」
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