レンアイゴッコ(仮)


「一旦家に帰ろうと思ってるだろ」

「え、うん。思ってる」

「危ないから不必要に帰るなよ」

芽吹こうとした可能性を、種の時点で東雲は掘り起こして捨てた。そもそも正爾は私に執着しているようにはみえなかったし、仕事が忙しいのは嘘でも無さそうだし、そういう暇はないだろう。

でも、実家に帰りすぎると父が心配するからなあ……。

やっぱり、家の鍵は回収すべきだったなあと後悔しながら食べ終わると手を合わせた。まあ、なるようになるし、美味しいものを食べて幸せな身体に、くよくよ悩む時間は勿体ないや。

「鍵、取り返すまで俺ん家に来る?」

呑気に結論づけていれば、目の前の超イケメンが神様発言をするじゃないか。

「え!いいの?」

「どうぞ」

言質が取れた。神さま仏さま東雲さま。まさに、捨てる神あれば拾う神ありである。

「一旦、一応安全確認の為に妃立の家を経由して帰るか」

「賛成!今日の分は私が出すね!」

「どうも」

浮かれた私はすっかり忘れていた。東雲は不埒な予告をしていたことを。
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