レンアイゴッコ(仮)
というわけで、お好み焼き屋で数点おつまみをテイクアウトし、家を経由してもらうことになった。

エントランスに入れないので灯りを確認する程度だけど、私の部屋は真っ暗だったので正爾が家に居ることは無さそうだ。やっぱり、不安っていうのは大体中身がないらしい。

「最終手段は大家さんに相談して鍵を取り替えて貰えばいいかな」

「それは最終手段で良いだろ。じゃあ酒買って帰ろう」

「賛成〜!」

コンビニにてお酒を数点買うと東雲の家へと向かった。

三日ぶりの東雲の家は相変わらず生活感がなくて、殺風景にされていた。モデルルームのような部屋はローテーブルの上だけかなり騒がしい。

東雲と二人で乾杯するのは数え切れないほど経験がある。感情の機微が少ない東雲はお酒が入ると少し緩くなることがあって、その瞬間を見るのが楽しかった。

そんな東雲は、私の仕事や彼氏の愚痴を今まで何も言わずに聞いてくれた。色んな場所で、色んな形で溜まってしまってモヤモヤのタンクを空っぽにさせてもらって、日常生活に響かないように。

我ながら振り回しているなあと呆れつつ、これも全て東雲が合わせてくれただけなのかと、彼の懐の深さを思い知る。
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