レンアイゴッコ(仮)
「(本命には激甘なんだろうなあ)」
私のネガティブが溜まったタンクを空っぽにしてくれる東雲。不毛な片想いを続けている東雲の恋愛のタンクが空っぽなら、付き合う以上、ちょっとくらい満たすことが出来ればとも思う。
東雲は肩を回しながら眠そうにしている。ずっと運転をしてもらったから、疲れたのだろう。
──そうだ。
「東雲、肩揉もうか?」
「いらない」
「私、上手だって評判いいよ!」
「へえ……」
東雲の反応を見るに、信じていない、と言った表情である。こうなってしまえば、私の負けず嫌い……基、闘争心に火がつくのは容易いことだ。
「失礼しまーす」
立ち上がってソファーの背後に回り込んでお構い無しに肩を掴む。その時、とある違和感に気付かされた。
「え……」
華奢に見えて、意外と厚みがあるその肩に。
「……何だよ」
真下にいる東雲が私を見上げる。
「や、え……、着込んでる?」
「シャツとインナーだけだよ」
「嘘でしょ、固くない……!?」
手首なんて、私と同じくらい細いんじゃないのって。そんなふうに見ていた東雲も、しっかりと男で。軽い衝撃に驚いていると、楽しそうに揺れるその振動が直に伝わる。
「あれあれェ?妃立さん、俺に褒められたいんじゃなかったの?」
東雲は私の闘争心を煽るのが大変お上手だ。