レンアイゴッコ(仮)
緊張していたせいか、力が全然入らなかった。デスクワークばかりの男を舐めていた。両肩に石でも仕込んでるのかと思うほどの強固さに、私の指の方が先に負けてしまった。全然解せていないけれど、東雲は常に、楽しそうにしていた。

「もう無理。頑張ったのに成果が出ないって、東雲、ドSなの?」

ふるふると手首を揺らしリラックスさせていると「俺の肩がごめんな」と、東雲は自分の首を捻りながら軽い謝罪をした。


「整体をお勧めする」

「次もがんばれ」

「鬼」

「……手」

目の前に手を差し出されて、一旦、戦闘中止。

お手のように手を乗せた。冷え性の男はお酒を飲んでも冷たい。その手は私の手首を優しく撫でた。

「っえ、なに」

「何って、クールダウン」

クールダウン、と言いながら私の方がマッサージされているみたいだ。手首、手の付け根、指先へと、私よりもずっと大きな手が、壊れないようにと丁寧に力をいれる。

「(でも、きもちい……)」

緩い思考の女は簡単に絆されそうになって、思いとどまる。引っ込めようとした。

「……!」

それよりも先に、東雲は私の手を繋いだ。
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