レンアイゴッコ(仮)
「体調は何ともない。ちょっと疲れただけかも」
「はあ?弱すぎじゃん」
「大丈夫大丈夫。じゃあ、お風呂借りるね」
これ以上長居すると世話焼き認定した東雲に言及されるに違いない。入れ替わるように浴室へ向かった。鏡で確認すると確かに青白い。
浮気に対して、私に原因があったとは思えない。けれども、少しずつ、決定打になる何かが積み重なっていたのであれば、見抜けない間抜けな私がやっぱり原因だ。
「(どこで間違えたんだろ)」
行き場のない悩みはシャワーでも洗い流せない。
お風呂を済ませると東雲が用意した服に着替え、歯磨きまでしっかりと済ませてリビングに戻った。
「もう寝るか」
寝る前に聞くにはあまりに甘ったるい声だ。朝の気怠い声の方が破壊力は勝るだろう。
「うん、寝る。会議の結果は私から部長に報告するね」
なんて無い会話の後、いつものようにソファーに寝転ぶと「なんで?」と、東雲が疑問を口にした。
「なにが?」
何も問題は感じられなかった。
部長に報告するのは私の役目だからだ。
「さっき言ったでしょ、対等でありたいとか」
けれども、どうやら東雲の不満は業務に対するものでは無いらしい。であるならば、彼の不満は'寝る場所'だ。
ベッドに浅く腰掛けた東雲は隣を軽く叩く。
「じゃあ、隣に来て」
「(そうくるか……)」
自分の発言によって自分の首を締めるとは。