レンアイゴッコ(仮)
「まーくんが、柑花ちゃんに連絡がつかないって言うから私から掛けてるの。鍵、無いと困るでしょ?私としてもさっさと縁切って欲しいし、でもポストに入れるのも不用心すぎるし、出来れば早めに渡したいんだけど、金曜とかどうかな」

つらつらと流れるように出される言葉に呆れ果てた。

言い分を聞く限り、私という邪魔者も、後ろめたさも無くなった正爾は晴れてあの女と正式に、堂々と付き合ったのだろう。どうでもいいけれど、その前に、

「(何故、そっちの都合に合わせなきゃいけないの)」

ムカつくに変わりはない。

「鍵は返して欲しいけど、金曜は無理。けれど、明後日なら時間が取れる。それでいいよね」

「明後日かあ……しょうがないね」

渋々納得した様子の女と待ち合わせを決めて電話を切った。凝り固まった四角いため息を吐き出す。

正爾のことを考えると必然的にあの夜がフラッシュバックする。動物みたいに腰を振る私の彼だった人の姿が嫌でも。

「(──……時間が何とかしてくれる)」

大丈夫、大丈夫と自分を慰めながらテーブルを片付けていると扉が開く音が聞こえた。

「おかえりー」

気を取り直して東雲を一瞥した。コンタクトはもう外したのか眼鏡の東雲はピントがあっていないのか難しい顔をしていた。

「どうした」

「え?なにが?」

「顔、真っ青だけど体調悪いの」

「……顔?」

思い当たるのは先程の電話だけ。え、でも……それだけで?
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