異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
「どうして教えてくれなかったの?」
「なんの話だ」
「カイブルとおにいしゃまが、喧嘩してること!」

 父親はまったく心当たりがないようで、目を丸くしていた。
 どうやら息子と騎士が険悪なのは、当主の知られざる場所でのみ表へ出てきた関係性であるようだ。

(あれ? わたし、もしかして……パパに密告しちゃった……?)

 ロルティはどうやってここから、冗談だと笑って誤魔化そうかと思案したが、一度口から飛び出た言葉は元になど戻らない。

「あの2人は、不仲なのか?」

 嘘のつけないロルティは、首を左右に振ることなどできず――しょんぼりと肩を落として、か細い声音でポツリと紡ぐ。

「そうみたい……。わたしもよく、わからないんだけど……」
「ジュロドは、カイブルに対して何か言っていたか」
「おにいしゃまの護衛騎士を辞めて、聖騎士になった。裏切り者って……」

 ロルティが兄の口から飛び出てきた言葉を父に告げれば、目頭を右手で抑えて深いため息を溢した。

「ロルティに心配をかけるとは……あいつらは一体、何をやっているんだか……」

 彼女はジェナロを慰めるように、頭部を優しく撫で付ける。
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