異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
(パパも、困ってるのかな……?)

 その感覚に気分をよくした彼は顔を覆っていた手を離すと、ロルティを抱き上げ左肩の上に座らせた。

「きゃー! たかーい!」
「ジュロドの誤解を解くぞ」
「やったー! パパ、大好き!」
「俺もロルティを愛している」

 口元を綻ばせた父親は愛娘に優しい声音で愛を囁くと、足早に部屋を出る。
 廊下にはロルティを守るために待機していた、カイブルの姿があった。

「カイブル。着いてこい」
「承知いたしました」

 ジェナロは騎士に硬い声でそう命じると、彼を伴いロルティとともに廊下を進み――訓練場へと足を運ぶ。

「ジュロド」

 ――兄の訓練はすでに、終わっていた。

 父親から名前を呼ばれたジュロドは、真後ろにカイブルが控えているのを確認すると露骨に表情を歪ませる。

「ロルティを困らせているようだな」
「僕はそんなこと……!」
「事実を伝えなかった俺のせいだ。すまない」
「と、父さん……?」

 貴族は自身の非を、簡単には認めない。
 ペコペコ頭を下げてしまえば、他の者達に示しがつかないからだ。

 領主が舐められると、領民にも危機が迫る。
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