異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
 だが、彼女はけして行動を止めなかった。
 黙って手を動かせば、数分で終わる作業だからだ。

 パタパタと箒を左右に動かし、チリトリの上に抜け毛を乗せるだけの簡単なお仕事。
 この程度であれば、6歳児も簡単にできる。

(あとはこれを、箱の中に入れて……)

 ロルティはチリトリの上へ山盛りになった抜け毛を四角い木製の箱へバサバサバサッと音を立てて投げ入れ、箒とチリトリをクローゼットの中へと収納する。

 本来であればすぐにでもお湯や水を使って毛を洗いたいところだが、もしも水を張ったたらいの中へ頭を突っ込んでしまったら、息もできずに溺死する危険性があるのだ。

『危険なことは、絶対に俺のいる前でしかやらないこと』

 そうジェナロに約束させられた彼女は言いつけを忠実に守り、今すぐに作業の続きをしようと行動するのは諦めた。

「わふ!」

 最近ロルティの新たなペットとして仲間入りを果たした犬は、ブンブンと尻尾を振ってロルティに存在をアピールする。

「わんちゃん、どうしたの?」
「わふーん!」
「もしかして、ブラッシングをしてほしいとか……?」
「わん!」
「いいよ! おいで!」
「わふっ!」

 ロルティが鳴き声だけでなんとなく犬の言いたい言葉を察知して両手を広げれば、獣が勢いよく彼女の胸に飛び込んでいく。
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