異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
 彼女の瞳には、あっと言う間に涙が潤む。
 大好きな父親の言うことを聞けない悔しさと、どうしてそんなことを言うのかと疑う気持ちがごちゃまぜになって、悲しくなってしまったのだ。

「わかってくれ。俺は娘が傷つく姿を、見たくないんだ」

 ロルティは困ったように眉を伏せる父親と目を合わせ、突然娘に無理な約束をさせようとした原因に気づく。

「神殿で働く人達を、懲らしめに行くの?」
「ああ」
「約束しなきゃ、わたしのことを連れて行ってくれない?」
「そうだな。悪い奴らは、罰を受けるべきだ。ロルティの力で、傷を癒やす必要はない」

 彼女は勘違いしていた。

 なんの罪のない人が傷ついているところを見たら、力を使わずにはいられないが――神殿の人々は、誰もがロルティが虐げられていることに見て見ぬふりをしたのだ。
 そんな人々まで施しを受ける必要はないと告げる父の言葉を理解したロルティは、今度こそしっかりと頷いた。

「約束する! わたしも連れて行って!」
「わかった」

 愛娘の返事を待っていましたとばかりに気分をよくした父親は、ロルティの胸元に抱きかかえられている獣達に問いかける。

「君達はどうする」
「むきゅぅ……」

 アンゴラウサギは神殿に、あまりいい印象がないのだろう。
 ぴょんっとロルティの胸元から飛び出ると、小さな足を動かしてちょこまかとベッドの上で膝を抱えて蹲るジュロドに寄り添った。
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