異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
「ロルティ。かすり傷程度で、聖なる力を使わないでくれ」
「でも! おにいしゃまが、苦しんでる……!」
「俺の娘は人の痛みがわかる子だ。だからこそ、自分の痛みにも敏感でいてほしい」
「びーかー……?」
「ロルティだって、痛いのと苦しいのは嫌だろう」
「でも……。わたしは助けられる力を持っているのに……。大事な人が悲しんでいるのを、見て見ぬ振りをするのは……」

 ロルティが納得できずに眉を伏せれば、彼女を安心させるように父親が愛娘の髪を撫でた。

「パパと約束してくれ。ロルティが聖なる力を使うのは、大事な人が重症を負った時だけだと」

 ロルティは大切な人の存在を頭の中で思い浮かべた。

 大好きな父と兄、護衛騎士のカイブル。
 2匹の獣達――。

 それ以外の人々が傷ついた姿を目にしても、聖なる力を使ってはいけないらしい。

(見て見ぬ振りなんて、できるかな……?)

 助けを求める人が、ロルティにとってなんとも思っていない人だとしても。
 彼女はきっと、それが自身に牙を剥く人間ではない限り、聖なる力を使ってしまうだろう。

「そんなの、無理だよ……」

 約束なんてできないと、ロルティは首を振った。
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