異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
「彼女もそう言っています」
「怯えているのが見えないのか!?」
「返事をしないと言うことは、そう言うことです」
「自身の都合のいいように受け取る男が、俺の愛娘に幸せな暮らしをさせてやれるわけがない!」
「それこそ決めつけではありませぬか。あなたは生まれたばかりの赤子を、神殿の前に捨てた。それがすべてでは?」
「違う! 俺は妻と子を愛している! 彼女が俺の好意に気づいてさえいてくれたら、絶対にこんな未来は訪れなかった!」
「妻が居ながらメイドに手を付けた男の都合のいい妄想を聞くために、私は地下へ籠もっていたわけではないのですがねぇ……」

 小さな手で耳を塞ぎきれなかったロルティには、司祭が口にした嫌味ったらしい言葉がよく聞こえてきた。

(ママの話、してるの……?)

 幼子の理解能力には限界がある。
 大人のように、言われたままの言葉をそのまま飲み込むことは簡単ではないのだ。
 だからこそ、彼女の頭の中はパンク寸前だった。

 わけがわからなくなって、瞳にはじんわりと涙が浮かぶ。

「おお……! 我の義娘! 聖女ロルティよ! 大粒の涙を流して水溜りを作り、天界に繋がる聖門を開き給え!」

 その様子を目にした司祭は、興奮を隠しきれない様子でロルティに向かって祈りを捧げた。
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