異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
(そうだ……。おとうしゃまは、いつもこうだった……)

 ロルティは唇を噛み締め、涙をぐっと堪える。
 泣くことを、ガンウが望んでいると思い出したからだ。

『床の上に小さな水溜りができるくらい、涙を流すことこそが君の使命だ!』

 ロルティは涙を流さなければならない理由を知らされていなかったが、思わぬ人物からそれが語られた。

「ロルティ様が涙を流せば、聖獣が生まれるからですよね」
「ええ。聖獣を山程生み出し支配下に置いて恐怖で支配すれば、私はこの国の新たな王となれる!」
「貴様は聖獣をなんだと思っているんだ。私利私欲のために動く、便利な道具ではないんだぞ!?」
「この世に召喚した聖女を守るだけに生き続けるなど、もったいない。私は有効活用してやりたいだけですよ」

 愛娘の特別な力を自身の欲望を満たす為だけに使おうとする司祭に怒りを抱いた父親が怒鳴りつければ、ガンウは肩を竦めて吐き捨てる。

「聖女が涙を流さなければ聖獣を召喚できぬなど、コスパが悪すぎますからねぇ……。初めて義娘が生み出したウサギを用いてさまざまな実験をしたのですが、すべて失敗してしまいまして……」
「うさぎしゃん……?」
「わふ! わふん!」

 ロルティは頭の中で、パズルのピースがカチンと音を立てて嵌ったような気がした。
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