異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
「森に帰らなくて、いいの?」

 ウサギは先程まで苦しそうな鳴き声を上げていたのが嘘のように大人しくなると、動かなくなってしまった。

(困ったなぁ……)

 これからどこに向かえばいいのかわからない状態で、アンゴラウサギを抱えて迷いの森を彷徨うのは無責任にも程がある。

 自分1人だけが野垂れ死ぬのならば自業自得だが、この子と一緒にいると決めたのならば巻き込んでしまう。

(それだけは、絶対駄目!)

 ロルティはどうにかアンゴラウサギを仲間の元へ帰すため、自らの靴元から動物を引き剥がそうと奮闘していたのだが――。

「ロルティ……?」

 聞き覚えのない男性の声で名前を呼ばれた彼女は、アンゴラウサギを引き剥がそうとするのをやめてぱっと顔を上げる。

 神殿からやってきた追っ手であれば、今すぐ逃げなければならないからだ。

 だがそこにいたのは、見慣れた純白の修道服に身を包んだ養父や神官。
 青いラインが印象的な軍服を身に着けた聖騎士ではなかった。

「おじしゃん、だあれ……?」

 軍服をさらにきらびやかにしたような、身なりの整った服装だ。
 左手の薬指にはロルティの瞳と同じ、エメラルドの宝石がつけられた指輪が嵌っている。
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