異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
 ――ジェナロ主導の元神殿を壊滅させてから、ロルティは命の危機に怯えることはなくなった。

 公爵邸から一歩外に出れば彼女を聖女と呼ぶものもいるが――自宅に引きこもっている限り、ハリスドロア公爵の愛娘ロルティとして過ごせている。

 生まれてすぐに親元から引き離された彼女は、神殿内でつらい修行の日々を送っていたのが嘘のように。
 毎日のんびり穏やかに、父親と兄から寵愛を受けて暮らしていた。

「ねぇ、カイブル」
「どうかなされましたか」
「わたし、聖女としての修行をこんなにサボってて、いいのかな……?」

 今の生活に不満はないが、ロルティは時々思うのだ。
 このままで、本当にいいのかと。

「誰かに、何か言われましたか」
「うんん。なんだか……落ち着かなくて」

 聖女とは本来、この世界にたった1人だけしか存在してはならない人間だ。

 その名を冠した者は傷ついた民を癒やし、時には未来を予知し、人々へ尽くさなければならない。
 役目を放棄して自分の幸せだけに満足している自分は、聖女失格なのではと不安になったのだろう。
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