異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
 すれ違う使用人達は一同に足を止め、その場で頭を下げる。ジェナロにとっては当然の光景でも、ロルティにはそれが見慣れないものであったらしく、屋敷にやってきたばかりの頃は何度もペコペコと頭を下げ返していた時のことを思い出した。

(俺の娘は、どうしてあれほどまでにもかわいらしいんだ……?)

 齢6歳にして、すでにあの可憐さだ。
 成人を迎えでもしたら、母親に似て国中を虜にする女性へ成長するに違いない。

(俺とジュロドだけで守りきれるか、不安でしかない……)

 ジェナロは愛娘に相応しい許嫁の選定を早めるべきかと悩みながら、メイド達の言っていた倉庫へとやってきた。

 ――ガタゴト、ガタゴト。

 木製のペダルを回す音が聞こえる。

 ロルティが耳にしたら喜びそうだと考えながら室内へ顔を出したはいいが――そこには1人のメイドしかいなかった。

「――娘は」

 3度目の問い掛けともなれば疲れてしまい、ロルティの名前を出す気力すらもない。
 不機嫌そうな当主から問い掛けられたメイドは、咄嗟にベダルを踏むのを止め、申し訳無さそうに椅子から立ち上がると頭を下げた。

「お嬢様が疲れてしまい……。お坊ちゃまがお部屋に連れて戻られました」

 ここでもまたすれ違う羽目になったのだ。
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