異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
(俺の許可なしに、不快な音を響かせている奴らは誰だ)

 ジェナロは娘に会えない苛立ちを心の中で燃え上がらせながら、その音が聞こえる中庭へと顔を出した。

「だ、旦那様!?」

 まさかふらふらとこの屋敷の主が1人で彷徨っているなど、思いもしなかったのだろう。
 驚きの声を上げた使用人達は、作業を中止すると慌てて頭を下げた。

「ロルティとジュロドはどこだ」
「お嬢様とお坊ちゃんでしたら、倉庫で糸車を紡いでおります」
「そうか」

 子ども達の行き先をこの場にいる使用人達が知っているあたり、兄妹の部屋にいたメイド達の言葉は嘘ではなかったようだが……。
 本人達と顔を合わせて話ができないのであれば、なんの意味もない。

(当主である俺をたらい回しにするとは、いい度胸だな)

 瞳に静かな怒りを讃えたジュロドは、彼女達を怒鳴りつけたところで何も変わらないと静かにその場を立ち去った。

(あっちへ行ったかと思えば、こっちにいると言う。まるでロルティはひらひらと美しい翅を羽ばたかせる、蝶のようだな……)

 彼は再び室内へ戻ると、倉庫を目指して廊下を歩く。
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