異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
 それでも彼がジェナロを嫌うことなく父親として慕っていられるのは、産みの母が息子に対しても酷い扱いをしていたからだった。

(幼い頃の記憶は、鮮明に残る……)

 夫に対しても、子に対しても。
 いい母親になれなかった女性は、離縁状を叩きつけ出て行った。

 ジュロドは恐らくそんなろくでもない女と妹の母親を思い浮かべ、脳内で比べているのだろう。
 その視線は何か言いたげに揺れていた。

「ねぇ、父さん。どうして僕は、母さんの息子として生まれたんだろう……?」
「それが運命だからだ」
「父さんが同じなせいで、僕は中途半端だ。兄としてでしか、ロルティのそばにいられない……」
「……ジュロドは、妹の伴侶になりたいのか」
「こんなにかわいい女の子がある日突然現れたら。愛おしくて仕方ないよ」

 ジュロドは父に、こう問いかけたいのだろう。

『ねぇ、父さん。僕って、異常なのかな?』

 ジェナロは息子の気持ちを肯定するほど、鬼ではなかった。
 自身だって、彼と同じ気持ちを娘に抱いているからだ。

 血の繋がりがなければ、自分の娘でなければ。
 年の差など関係なく何が何でも手に入れようとした。
 彼女にはそれだけの魅力がある。
< 82 / 192 >

この作品をシェア

pagetop