異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
「ありがとう。父さん」
「ああ」

 相槌を打った彼は気持ちよさそうに目を閉じている神獣の耳にリボン結びつけたあと、ロルティの髪に括り付けた。

(こうしてみると、本当にそっくりだな……)

 彼女の母親が自らこの世に生み出した編み物達が、1つも手元に残っていないことが惜しまれる。

(命さえ続いていれば、それだけでいい……)

 失ったものは元には戻らない。
 だからこそ、今手元にあるものを大切にするべきだ。

 ジェナロは愛娘の髪を優しく撫でたあと、ゆっくりと身体を離した。

(愛する娘を守るためにそれが必要不可欠であるとすれば、役目をほっぽり出すわけにはいかない)

 四六時中そばにいることはできないが、ジェナロが愛娘を大切に思う気持ちだけは本物だ。

「また来る」
「うん」

 彼は再び息子にあとのことを頼むと、ジュロドと別れて執務室を目指した。
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