おれは“祓えない退魔師”

第九話

 なにかふわふわしたものが頬に触れる。

 (いいにおいだ……)

 それは額や鼻先をかすめて、首筋へとすべっていく。

 「……ふふっ、くすぐったい」

 キュィキュィ、耳元で高い声で鳴いている。

 「……ん?」

 ゆっくり目を開けると、視界に飛び込んできたのは小さくて真っ白なきつね。

 「……? ……きつね!?」

 俺は慌てて飛び起きる。きつねが、俺の周りをせわしなく回っている。

 (……ここは?)

 畳に襖、机に棚、そしてーー

 「祐くん、おはようさん」
 「おはよう。コンが起こしちゃったみたい、ごめんね」

 東間と伊都に声をかけられて、俺はようやく自分がいる場所が寮の部屋だと気付いた。

 「……そっか、家じゃないんだった」

 寝ぼけた頭をかかえながら、力なくつぶやいた。伊都と東間は、布団を畳み、もう制服に着替えている。部屋の端にもう一組、きれいに畳まれた布団があった。

 「あいつは?」
 「俺たちが起きたときはもうおらへんかったな~」
 「先に食堂に行っちゃったのかもね」

 単独行動は禁止。バディで行動しなきゃいけないのに、

 「勝手だな……」

 もう一度布団にダイブすると、コンがすり寄ってきた。

 「急いで支度して追いかけたら?」
 「なんで俺があいつに合わせなきゃいけないんだよ」
 「なんでって、バディやから?」
 「あいつは俺のことバディって認めてないみたいだけど」

 東間は少し考えて、なにかを言いかけるが、伊都に急かされて食堂へ行ってしまった。

 「やべっ、俺も早くいかねーと」
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