おれは“祓えない退魔師”

第十話

 朝食を終えた俺たちは、体育館に集められた。今日から授業開始、初めての授業は”退魔学”って聞いたけど、なんで体育館なんだ?
 しばらくすると、どこからともなくおばあさんが現れた。校長に負けず劣らず小さくて、紫色の法衣(僧侶の普段着)を着ている。

 「ワシは鬼灯(ほおづき)じゃ。今からお主らに退魔学を教える。心して聞くがよい」

 (うわぁ、厳しそうなばあさんだな)

 すかさず、キッと鋭い視線が突き刺さる。心の声を見透かされたみたいで、俺はギョッとした。
 鬼灯先生に連れられて、体育館の二階に移動した。そこにはだだっ広い畳部屋があり、俺たちは一列に並んで座らされた。

 「まず一番初めに、退魔師の役割について話しておく」

 退魔師には字の通り、魔を退ける役割がある。
 魔というのは、邪気(悪意のある気)をまとった(あやかし)や悪霊のこと。
 この者らの邪気を取り払い、魂を幽世(かくりよ)(死後の世界)に(かえ)す。

 「これが、退魔師の役割じゃ。大事なことじゃからしっかりと覚えておくように」

 生徒たちが返事をしたことを確認すると、鬼灯先生は手に平らな棒を持った。

 「これから座禅を組んでもらう。あぐらをかいて、背筋を伸ばせ」

 言われたとおりの体勢になる。

 「ゆっくりと息を吸って、ゆっくりと吐く。ただ座ることだけに集中し、自分の声を聞くのじゃ」

 目をつむってゆっくりと呼吸をする。何度か呼吸しているうちに不思議と心が落ち着いてきた。

 (あー、朝ごはんうまかったなぁ。煮魚あんまり好きじゃなかったけど、食堂のはうまかった。やっぱ、デザートのほっこりプリンがーー)

 --バシィッ!!

 「ーーっ!?」

 木の棒で肩を叩かれたけど、思ったより痛くない。

 「余計なことを考えるでない。精神を統一しろ」

 (そんなこと言われても、勝手に浮かぶんだっての……)

 ーーバシッ!

 「姿勢を正せ」

 ーーバシッ!

 「寝るでない」

 ーーバシッ!

 「しゃきっとせんか」

 何度も何度も肩を叩かれて、三十分ほど経過したころ、姿勢を崩していいとお許しが出た。

 「あ~~~~」

 大の字に仰向けに寝転がると、バンッと視界いっぱいに鬼灯先生の顔がドアップで映った。

 「寝るな、バカ者」
 「す、すみません!」

 しわくちゃの顔に驚いて飛び起きる。

 「座禅は基本的な修行法じゃ。姿勢を調え、呼吸を調え、心を調える。そうすれば自ずと、感じるはずじゃ」

 先生は淡々と静かに説明をして、再び座禅の修行が始まった。 
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