おれは“祓えない退魔師”
第八話
中からたちまち白い影が立ち上る。
「ちょっ、ウソだろ!?」
俺はサーッと後退し、白い影と距離を取った。それはみるみるうちに狐の形になり、俺の方へ勢いよく飛んできた。
「うわぁぁぁぁぁ!!」
あわてて逃げる。整理途中のみんなの荷物を蹴飛ばしながら部屋の中をぐるぐる回る。
「こら! 勝手に出てきちゃだめでしょ!」
伊都の声に反応し、影がピタっと止まった。
「おいで」
影は伊都の方へするすると戻っていく。そして、手のひらの上でポンッと変化した。
ふわふわのシッポ、丸い目、白くてきれいな毛並み。
「あ、きつね」
「へぇ~実体化できるっちゅーことは、よっぽど霊力が高いんやな」
「かわいいでしょ? この子、頭もいいんだよ」
伊都の肩の上でちょろちょろ動き回っている。
「いや、いくらかわいくて頭がよくても、妖だろ?」
俺の一言に、伊都がしょぼんと肩を落とす。
「飼いならして、式神として使役する(仕事をさせる)こともできるんちゃう?」
東間の発言に、伊都がうんうんとうなずいている。
「でもさーー」
ふと、視線を感じた。銀髪が腕を組み、無言でこちらを見ていた。
「あ、起きたん?」
「こんな状況で寝れるはずないだろ」
「ごめんね……」
銀髪はため息をつき、きつねに視線を移す。
「そいつは中級霊並みの霊力がある。暴走したらどうするつもりだ?」
「それは……」
伊都が言葉に詰まっていると、きつねがキュイキュイと鳴いて伊都の頬にすり寄る。
「責任がもてないなら飼うな」
ピシャリと言われて、伊都はうつむいてしまった。
(俺もよくネコや犬を拾ってきて、母さんに怒られたな)
「俺かきみやったら、抑えられるんちゃう?」
東間の言葉に、銀髪が眉を寄せる。
「協力してあげようや。ルームメイトのよしみで」
伊都がひょこひょこと銀髪に近づいて、きつねを差し出しながら頭を下げた。
「お願いします」
きつねは頭をかしげて、じっと銀髪をみている。キュゥン、と寂しそうに鳴いている。
「……っ、勝手にしろ」
伊都の表情がぱぁぁと明るくなった。
「それって、飼ってもいいってこと」
「俺は責任もてない。おまえらで対処しろ」
「ありがとう! 東間くんと祐くんも、ありがとう」
「ますますにぎやかになるなぁ~」
(俺は許可した覚えはないんだけど……)
伊都がこちらにやってきて、きつねを俺に差し出す。
「よろしくね」
キュルキュルと鳴きながら目を潤ませている。
「か、かわいい……」
抱っこさせてもらうと、毛がツヤツヤでしっぽがもふもふ。小動物特有の、なんともいえないかわいらしいにおいがした。これが保健室で暴れてた妖だなんて、今のかわいい姿からは考えられない。
「せっかくやから名前つけたら?」
「じゃあ、名前、つけてあげて?」
伊都は銀髪の方をみてにこっと笑う。
(どうせ、必要ないとか好きにしろとか言うんだろ)
銀髪は少し考えた後で、ぽつりとつぶやいた。
「……コン」
「きつねだからコン?」
「……そうだ。気に入らないならーー」
「かわいい!」
「ええやん、わかりやすくて」
伊都はうれしそうにきつねを抱き上げた。
「コン、お前の名前はコンだよ」
きつねもうれしそうにキュルキュル鳴いた。それをみている銀髪も、心なしかうれしそうに目元をゆるめている。
(あんな顔もするんだ)
「ついでに自己紹介しとこか」
東間のその一言で、伊都と東間は銀髪に向かって自己紹介した。俺の番がやってきて、銀髪の方をみる。
「俺は、神代祐。おまえとは一応バディだから、迷惑かけるかもしんないけどーー」
「迷惑をかける前提で話をするな。俺にバディは必要ない」
(ーーんんん~~~やっぱやな奴!! 一瞬でもいい奴かもと思った俺がまちがいだった)
「俺は、夜刀士稀だ。誰ともつるむつもりはない」
それだけ言うと立ち上がり、静かに部屋を出て行ってしまった。
「悪い子ではなさそうだよね~」
「う~ん、まぁ、これから徐々に、やな」
(なんであんな頑なに、一人になろうとすんだよ)
「意味わかんね~」
ぽつりとつぶやいて畳に寝転ぶ。天井の染みがおばけにみえて、目をつむろうとしたら、伊都と東間が顔をのぞきこんできた。
「きっと、仲良くできるよ」
「そうや、相性いいと思うで」
二人の言葉に少し心が救われて、力なく笑う。
「相性は、よくないだろ」
東間が意味深に笑った。
「一番おもろい組み合わせやと思うけどな」
意味が分からず、苦笑した。
「ちょっ、ウソだろ!?」
俺はサーッと後退し、白い影と距離を取った。それはみるみるうちに狐の形になり、俺の方へ勢いよく飛んできた。
「うわぁぁぁぁぁ!!」
あわてて逃げる。整理途中のみんなの荷物を蹴飛ばしながら部屋の中をぐるぐる回る。
「こら! 勝手に出てきちゃだめでしょ!」
伊都の声に反応し、影がピタっと止まった。
「おいで」
影は伊都の方へするすると戻っていく。そして、手のひらの上でポンッと変化した。
ふわふわのシッポ、丸い目、白くてきれいな毛並み。
「あ、きつね」
「へぇ~実体化できるっちゅーことは、よっぽど霊力が高いんやな」
「かわいいでしょ? この子、頭もいいんだよ」
伊都の肩の上でちょろちょろ動き回っている。
「いや、いくらかわいくて頭がよくても、妖だろ?」
俺の一言に、伊都がしょぼんと肩を落とす。
「飼いならして、式神として使役する(仕事をさせる)こともできるんちゃう?」
東間の発言に、伊都がうんうんとうなずいている。
「でもさーー」
ふと、視線を感じた。銀髪が腕を組み、無言でこちらを見ていた。
「あ、起きたん?」
「こんな状況で寝れるはずないだろ」
「ごめんね……」
銀髪はため息をつき、きつねに視線を移す。
「そいつは中級霊並みの霊力がある。暴走したらどうするつもりだ?」
「それは……」
伊都が言葉に詰まっていると、きつねがキュイキュイと鳴いて伊都の頬にすり寄る。
「責任がもてないなら飼うな」
ピシャリと言われて、伊都はうつむいてしまった。
(俺もよくネコや犬を拾ってきて、母さんに怒られたな)
「俺かきみやったら、抑えられるんちゃう?」
東間の言葉に、銀髪が眉を寄せる。
「協力してあげようや。ルームメイトのよしみで」
伊都がひょこひょこと銀髪に近づいて、きつねを差し出しながら頭を下げた。
「お願いします」
きつねは頭をかしげて、じっと銀髪をみている。キュゥン、と寂しそうに鳴いている。
「……っ、勝手にしろ」
伊都の表情がぱぁぁと明るくなった。
「それって、飼ってもいいってこと」
「俺は責任もてない。おまえらで対処しろ」
「ありがとう! 東間くんと祐くんも、ありがとう」
「ますますにぎやかになるなぁ~」
(俺は許可した覚えはないんだけど……)
伊都がこちらにやってきて、きつねを俺に差し出す。
「よろしくね」
キュルキュルと鳴きながら目を潤ませている。
「か、かわいい……」
抱っこさせてもらうと、毛がツヤツヤでしっぽがもふもふ。小動物特有の、なんともいえないかわいらしいにおいがした。これが保健室で暴れてた妖だなんて、今のかわいい姿からは考えられない。
「せっかくやから名前つけたら?」
「じゃあ、名前、つけてあげて?」
伊都は銀髪の方をみてにこっと笑う。
(どうせ、必要ないとか好きにしろとか言うんだろ)
銀髪は少し考えた後で、ぽつりとつぶやいた。
「……コン」
「きつねだからコン?」
「……そうだ。気に入らないならーー」
「かわいい!」
「ええやん、わかりやすくて」
伊都はうれしそうにきつねを抱き上げた。
「コン、お前の名前はコンだよ」
きつねもうれしそうにキュルキュル鳴いた。それをみている銀髪も、心なしかうれしそうに目元をゆるめている。
(あんな顔もするんだ)
「ついでに自己紹介しとこか」
東間のその一言で、伊都と東間は銀髪に向かって自己紹介した。俺の番がやってきて、銀髪の方をみる。
「俺は、神代祐。おまえとは一応バディだから、迷惑かけるかもしんないけどーー」
「迷惑をかける前提で話をするな。俺にバディは必要ない」
(ーーんんん~~~やっぱやな奴!! 一瞬でもいい奴かもと思った俺がまちがいだった)
「俺は、夜刀士稀だ。誰ともつるむつもりはない」
それだけ言うと立ち上がり、静かに部屋を出て行ってしまった。
「悪い子ではなさそうだよね~」
「う~ん、まぁ、これから徐々に、やな」
(なんであんな頑なに、一人になろうとすんだよ)
「意味わかんね~」
ぽつりとつぶやいて畳に寝転ぶ。天井の染みがおばけにみえて、目をつむろうとしたら、伊都と東間が顔をのぞきこんできた。
「きっと、仲良くできるよ」
「そうや、相性いいと思うで」
二人の言葉に少し心が救われて、力なく笑う。
「相性は、よくないだろ」
東間が意味深に笑った。
「一番おもろい組み合わせやと思うけどな」
意味が分からず、苦笑した。