おれは“祓えない退魔師”

第十九話

 今日、俺たちは山奥にある洞窟にきている。校長の特別授業で、洞窟の中に隠した護符をみつけて持ち帰らなければいけない。護符には少し霊力が込めてある。その霊力を探知する、という訓練らしい。四人グループで順番に向かうことになった。俺たち四人が、一番最初だ。

 『その洞窟には、かつて祓いきれず封印した妖がいる。くれぐれも気をつけよ』

 と、校長は真面目に言っていたが

 『まぁ、肝試しのようなもんじゃ。せいぜい楽しめ』

 と、ケラケラ笑いながらどこかへ去っていった。

 (楽しめって言われても……)

 洞窟の中は足元も見えないくらい真っ暗。人が一人やっと通れるくらい狭く、地面はでこぼこして歩きにくい。ひんやりとした冷気が肌にまとわりついて寒気がする。

 「さすがに、周りがみえないのは危険だ」

 士稀が短い言葉を唱えると、指先に霊力が集中し、ライトのようにぼやぁと光る。

 「名付けて、指先ライトやな」

 (すげぇ。こんなこともできるのか)

 ゆるやかに風が吹いている。入ってきた入り口とはまた別の穴が開いているのだろう。

 「おいっ、伊都、離れるんじゃねぇぞ。と、東間は? ちゃんとついてきてるか?」
 「たっ、た、祐くん、制服の裾持たないでよ。伸びちゃうよ……」
 「暗いし狭いし、いかにも!って感じやなぁ」
 「楽しんでんじゃねぇよ! さっさとみつけてさっさと帰るぞ!」
 
 その時、バサバサとなにかが飛び立つ羽音が、あちこちから聞こえてきた。

 「ぎゃぁぁぁ!!」
 「ひぃぃぃぃ!!」
 「蝙蝠(こうもり)やな」

 飛び上がって驚く俺と伊都、そして一番後ろで余裕そうな東間。俺たちの叫び声が、洞窟内で反響している。他のグループも時間差でやってくるので、この情けない声が聞かれるかもと思うと恥ずかしいけど、今はそんなこと気にしてる余裕はない。

 「……うるさいぞ」

 先頭を歩いていた士稀が、後ろを振り返って呆れている。

 「だってさ……こわいよ」
 「無理だって、こんなの」

 士稀は、俺たちの泣き言をスルーして前に向き直る。

 「右に分岐」

 なんでもないように淡々と進み続ける士稀。

 (こいつには恐怖心がないのかよ)

 校長のことだ、絶対何か仕掛けてるに違いない。落とし穴とか、罠とか、飛び道具とか。
 警戒しながら恐る恐る進む。ぴちゃん、と水の落ちる音が聞こえたと思ったら、首の後ろにぽたっと水滴が落ちた。

 「ぎぃぃぃやあぁぁぁぁぁ!!!!」
 「え!? え!? なになになになに!? いやぁぁぁぁぁ!!!!」

 パニックになり叫びまくっている俺と、訳も分からずつられるように大声を上げる伊都。

 「これだけ賑やかやったら、なんも寄ってこぉへんやろ」
 「はぁ~~~、鼓膜が破れる」

 なぜか楽し気な東間と、イラついている士稀。
 先に進むと、案の定、落とし穴に針山が仕掛けられていたり、ピンと張りつめた糸に引っかかるとクナイが飛んできたり。そういう罠がいくつか仕掛けられていた。士稀がいち早く気づいて教えてくれたので、なんとか罠を回避できた。
 そういえば校長が、この洞窟は昔、忍者の演習場だったとかなんとか言っていたのを今思い出した。

 (命がけの肝だめしじゃん……)

 そんな罠に足を止めながらも、俺たちは洞窟の奥へと進んだ。

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