【電子書籍化】出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが~その好きな人って変装したわたしでは?
 普通の人間であっても簡単な魔法は使えるものの、やはり専門的で強力な魔法を使うことはできない。研究所と呼ばれる場所に所属するのは、そういった魔法に長けている者が多いというのがアンヌッカの認識だった。
 だが、古代文字の解読なんては魔導士でなくたってできるのだ。
 アンヌッカがいい例だろう。彼女は生活魔法を使えるが、魔導士たちのような攻撃的な魔法は使えない。そして、それを不便だとは思っていない。
「そういうことだ」
「だから、軍とメリネ魔法研究所が手を結ぶようにと、国王陛下が命じたわけですね?」
「こちらからしたら、脅しだがな」
 ははっと笑った父親だが、もちろんその笑いに覇気はないし、アンヌッカも笑う気にはなれない。
「これは、断れない縁談ということですよね?」
 今の話を聞いただけでも、軍がメリネ魔法研究所と繋がりを持ちたいという意図をひしひしと感じた。
「いや、だが……アンがどうしてもいやだというのならば、こちらだって、いろいろと脅しをかけて……」
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