【電子書籍化】出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが~その好きな人って変装したわたしでは?
 お茶会やら食事会やら、夫婦でどうぞという招待状が届くものの、ライオネルの許可がおりないためすべてお断りの手紙を書いていた。理由は、夫の仕事が忙しいとかなんとかにしてある。そういったことを書いて断っておけばいいというのも、ライオネルからの指示だ。
 アンヌッカとしてはわずらわしい社交の場に出なくていいというのであれば、それに越したことはない。
 だから昼間は軍の施設で古代文字によって書かれた魔導書の解読を行い、屋敷にいるときはお断りの手紙を書く。しかし、そういったお誘いも断り続けていると、誘われる回数そのものが次第に減ってくる。その結果、返事を書く手紙の数も少なくなってくる。
 アンヌッカにとってはいいことばかりなのだが、それでもライオネルへの手紙だけは書き続けていた。
 東屋でのんびりとお茶を飲んでいると、ひゅぅと風が吹くのが心地よい。
「奥様。旦那様ってどんな方ですか? あちらで顔を合わせることはないのですか?」
 ヘレナも、アンヌッカが軍本部に派遣されて仕事をしているのは知っている。コリンズ夫人が突然訪れたときに、口裏を合わせるためでもあり、ヘレナだけには事実をすべて伝えていた。それは義姉の妹の名を借りて、身分を隠して軍の仕事をしているというその事実まで。
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