【電子書籍化】出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが~その好きな人って変装したわたしでは?
 ただあまり深い話をしてしまうと、軍との契約事項に触れてしまうため、伝えているのはそれくらいしかない。
 だからヘレナも、同じ軍本部にいればライオネルと会う機会があるだろうと、考えているようだった。
「そうね。顔くらいは見たわ」
 毎日、帰る前に彼の執務室へ行き、日誌を手渡している。そのときには魔法がいかにして発現し、どれだけ人々の生活を豊かにしてきたのか。また、魔法はなくてはならない存在なのだ、というのを力説していた。
 最初の頃は、頬杖をつきながら書類をめくっていたライオネルだが、次第にアンヌッカのしつこさに負けたにちがいない。
 十日ほど過ぎれば、アンヌッカの日誌に目をとおしながら話を聞いてくれるようになった。それでも半分以上は上の空だ。
 古代文字でなんて書いてあるでしょうか? と日誌に問題を書いた日もあったが、たいてい無視されて彼の押印だけ。
 それもやはり十日ほど過ぎると、押印の隣に答えが書かれるようになった。
 これはアンヌッカの粘り勝ちと言ってもいいだろう。
 さらに十日ほど過ぎると、あのライオネルが古代文字で返事を書いてきたのだ。それは、「よくできている」とか一言であるが、それでも魔法嫌いの彼からすれば大進歩ではないだろうか。
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