【電子書籍化】出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが~その好きな人って変装したわたしでは?
「怖そうな顔をしていたけれど、まぁ、部下にはやさしいのではないのかしら?」
「そうなんですかね? 部下にやさしくするのであれば、奥様にもやさしくしてほしいですよね?」
「ええ? わたしは別に気にしていないわよ。ほら、なんだっけ? 亭主元気で留守がいい? そういう昔からの言い伝えもあるくらいだし、まさしくその理想が今でしょ?」
 ライオネルが屋敷に戻って来られないのは、あの仕事量が原因だ。アンヌッカは、日誌を出すために夕方しかあの部屋に入ったことはないが、いつも彼の机の上には書類が山積みになっている。
 それに軍人なのだから、書類をさばくだけが仕事ではないだろう。たまに、執務室にいないときもあり、それは事前にイノンかシンディから連絡がある。
 とにかく、忙しい人なのだろうと、彼と顔を合わせてそう感じた。
「まぁ、そうですね。そうかもしれませんね。おかげさまで、私も自由にさせてもらっていますし。これでは、一生、ここにいたいくらいです。私が結婚できなかったら、奥様のせいですからね」
 ヘレナにとってもこの場は悪い環境ではなさそうだ。ここに来たばかりのときは、人手が足りずヘレナにも苦労をかけただろう。
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