【電子書籍化】出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが~その好きな人って変装したわたしでは?
 お別れの花束をもらったばかりだというのに、明日からまた来ますというのも気まずかった。
「いいわよ、お花。あなたが解読したあの魔導書。とても価値あるものだと聞いているわ。だから、これはお別れの花束じゃなくて、お疲れ様の花束よ」
 シンディがそう言ってくれるなら、この花束をもらっても罪悪感が減る。
「ありがとうございます。とにかく今日は一度帰ります。もしかしたら、また明日もここにいるかもしれませんが」
 今度は、ははっと笑い声が室内に響く。
「うん。とにかくお疲れ」
「お疲れ様でした」
 そこまで言って、アンヌッカは荷物をどうしようかと思った。
 せっかくトランクに詰め込んだこの荷物だが、明日からまたここに来るというのであれば、持ち帰ってもまた持ってくる羽目になるのでは。
「あの……荷物ですが、とりあえず今日は置いて帰ってもいいですか? もしかしたら、またこちらで仕事を続けるかもしれませんし」
「ええ、問題ないわ。私がしっかりと見張っておくから」
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