【電子書籍化】出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが~その好きな人って変装したわたしでは?
「どうやら、王城には隠し部屋があるらしい」
 唐突にそのようなことを言われ、アンヌッカは「へ?」と情けない声をあげた。
「ちょちょちょっと、待ってください。そんな話、わたしが聞いていい話ですか? あ~あ~、わたし、何も聞いていません」
 両耳を手で塞ぎ変な声をあげるアンヌッカを、ライオネルがやわらかな眼差しで見つめている。
「やはり、おまえは面白いな」
 また、鼻で笑われた。
「安心しろ。ユースタス殿下も知っている話だ。むしろ、あれからの命令だと思ってもらっていい」
 ユースタスを殿下と呼んでみたり、あれ扱いしてみたり、ここにライオネルとユースタスの関係性が見え隠れする。
「え? 王太子殿下からですか?」
 最近は顔を合わせていないユースタスの姿が、アンヌッカの脳内に思い浮かんだ。彼に会ったのはいつ以来だろうか。
「どうやら、王城には隠し部屋があるらしい。そう、昔から言われているのだが、その部屋を知っている者は誰もいないようだ。現国王陛下ですら、そういった話は聞いたことがあるものの、実際にそのような部屋があるかどうかはわからないとのこと」
 もちろん、アンヌッカはそういった話を知らない。そして、この話の続きを聞いていいものかどうかと思案してしまう。すべてを聞いたら最後、引き返せないのではと不安にかられた。
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