【電子書籍化】出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが~その好きな人って変装したわたしでは?
「そうですね。マーレ少将のおっしゃるとおりかと。この部屋、つい最近まで誰かが使っていた形跡があります。それに……」
 アンヌッカはすぐに書棚を確認する。
「ここからここまでは、おそらく三百年前の魔導書などです。ですが、この棚のここ。これは、最近のものです」
「わかるのか?」
 ユースタスの声がほんの少し大きくなった。
「はい。装丁が時代によって異なりますから。この装丁のこの部分は、最近の流行りの装飾ですね」
 その対象となる書物を一冊、アンヌッカは取り出した。中身をパラパラと確認すれば、何かの記録簿のようにも見える。
「……これ、魔導書ではないですね。ただ、これはわたしが見てはいけないようなものだと思います」
 アンヌッカは手にしていた書物を、ユースタスに押しつけた。
「おいおい、私は古代文字など簡単に読めないよ?」
「それは古代文字では書かれておりません。ですから、殿下でもお読みになれます」
「おい、カタリーナ。これも、現代語で書かれているのか?」
 ライオネルがユースタスの手にしている書物と似たような装丁の書物を手にする。
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