【電子書籍化】出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが~その好きな人って変装したわたしでは?
 先頭はライオネル、続いてアンヌッカ、最後にユースタス。護衛という観点から考えれば、ユースタスを真ん中にすべきだろう。だが、ユースタスがそれを拒んだ。
「足元に気をつけろ」
 ライオネルの言い方はいつもつっけんどんではあるものの、それでもアンヌッカやユースタスを気にしている様子が伝わってくる。
 言葉は悪いが、心根はやさしい人物なのだ。もしくは、恥ずかしがり屋なのか照れ隠しなのか。
 カツーンカツーンと、三人分の靴音だけ響くのは、いささか不気味でもある。
 階段を下りきったところにもう一枚の扉があり、開けた先には小さな部屋があった。そして彼らが足を踏み入れた途端、その部屋はぱっと明るくなる。
 照らされた室内は石材の壁が剥き出しにはなっているものの、床には絨毯が敷いてある。さらに机やら書棚やらが配置されていて、魔法の研究をするというのであれば、もってこいの場所だろう。
 ざっと見た感じ、書棚にも貴重な魔導書が並んでいるようだ。
「これが三百年前のものとは思えないな」
 ライオネルは手にしていたランプを、近くにあった机の上に置いた。
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