【電子書籍化】出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが~その好きな人って変装したわたしでは?
(やめて!)
 そう思っても、それは言葉にはならない。苦しくて、痛くて、それでも相手の指を首から引き離すように、アンヌッカも手をかけた。
 ――バシッ!
 アンヌッカの首をしめていたものがゆるんで、どこかに飛んでいった。
「カタリーナ、無事か?」
「……ケホッ、は、はい……」
 一気に酸素を求めてしまったのもあり、アンヌッカはケホケホと咳き込んだ。
 ぱっと室内が明るくなったのは、誰かが明かりを灯したからだろう。いつの間にと思えるほど、室内には十人近くの人がいた。
「ロンバール・ディグルス。君を殺人未遂罪で捕縛する」
 ユースタスの声に、幾人かがささっと動き、ロンバールと呼ばれた男を縛り上げていく。
 アンヌッカにしてみれば、何が起こったのか、そのロンバールとはいったい誰なのかと、それが気になっていた。
「カタリーナ、水だ」
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