【電子書籍化】出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが~その好きな人って変装したわたしでは?
 ゆっくりと水を飲んで、思考を落ち着ける。冷たい水が喉元を過ぎ、ゆっくりとお腹の中にしみわたっていく。
「ありがとうございます。もう、大丈夫です」
 ライオネルと話をしている間に、ユースタスの姿は部屋から消えていた。先ほど、アンヌッカの首を絞めて殺害しようとしたあの男も。
「そういえば、あの人、誰ですか? 殿下のお知り合いですか?」
 アンヌッカが真面目な顔で問いかければ、ライオネルは驚いたのか目を大きく広げた。彼のこういった表情は珍しい。
「おまえ……王弟を知らないのか?」
「王弟? 国王陛下の弟? 陛下には弟がいらっしゃったのですか?」
「ああ。臣籍にくだり、今ではディグルス公爵を名乗っている。そして、国家魔導士の筆頭魔導士でもある」
「え? 国王陛下の弟が、国家魔導士で……? あの隠し部屋の記録簿の持ち主……?」
 半分、意識が飛びかけたアンヌッカの頭では、情報量が多すぎて混乱し始めている。
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