【電子書籍化】出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが~その好きな人って変装したわたしでは?
「いや、たまたまたではない。意図的だ……特に俺の母親は、あの場所に呼び出された……」
 そこで悔しそうに、ライオネルは顔をゆがめる。
「呼び出された? 誰に、ですか?」
「ロンバールだ。ロンバールは母親を人質にして、父親を脅し、実験に協力しろと言い寄ったらしい……」
 テーブルの上に置かれたライオネルの拳が震えている。その様子をしばらく見つめていたアンヌッカだが、自然とその拳を自身の手で包み込んでいた。
 驚いたライオネルが顔をあげ、アンヌッカを真っすぐに見つめる。
「マーレ少将。辛いことであれば、お話しなくても大丈夫です。今回の事件、なんとなくですがわかりましたので」
「いや……問題ない。おまえには知っておいてもらいたいと、そう思った。とにかく、母親を人質にとられた父親だが、ロンバールをなんとか説得しようとしたようだ。だが、ロンバールはそれを無視して母親を閉じ込め、父親がそれを助けている間に――」
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