【電子書籍化】出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが～その好きな人って変装したわたしでは？

　ユースタスの笑顔が憎たらしい。
「だけどね、君。既婚者。彼女に手を出したら許さないよ」
「なぜ、おまえの許しが必要なんだ？」
「だから、覚えてない？　君の結婚は国王からの命令。軍と民間魔法研究所の繋がりを強くするためのね。そんな理由があっての結婚だったのに、ライオネルが職場恋愛して奥さんをぽいっと捨てましたって。笑えないよね？　完全にメリネを敵に回すよね？」
　ユースタスの言葉は間違ってはいない。それに、結婚したといっても、一度も妻となった女性には会っていない。だから顔もわからない。
「ライオネル。だからね、奥さんと別れるならきちんとこちらの非を認めて謝罪して、離縁後の生活も保障する。それくらいのことをしないとダメだよ」
「おまえは、俺を別れさせたいのか？」
「いや？　私は君の幸せを願っているだけ。国王に言われてとりあえず結婚してみたけど、君はそれで幸せかい？」
　会ったことのない妻との生活が幸せかどうかなんてわかるはずがない。