【電子書籍化】出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが~その好きな人って変装したわたしでは?
 ライオネルが戻ってくるというから、仕事を休みたいとアリスタとマーカスに伝えたところ、彼らはそれに立ち会うとまで言い出したので、さすがにそれは制した。落ち着いたところで、ライオネルを連れてメリネの家に挨拶に行くからと必死に説得し、それで妥協してもらった。
「まぁ、奥様。おきれいです」
 普段の動きやすい簡素なドレスと違い、こうやって着飾ったのはいつ依頼だろうか。もしかして、一人ぼっちの結婚式依頼かもしれない。
「普段着でいいのに」
「そういうことをおっしゃらないでください。こういった機会でもなければ、ドレスを着ようとなさらないでしょう? これでは宝の持ち腐れです。本当に腐ってしまいます。たまにはこうやって袖をとおしてあげないとなりません」
 ヘレナに力説され、アンヌッカは渋々とそれに従った形だ。
 カランカランとベルが鳴った。
「旦那様ですよ」
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