【電子書籍化】出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが~その好きな人って変装したわたしでは?
 ドクドクと心臓が激しく鳴り、全身に熱い血液を送っている。
 彼に好きな人がいる。その事実にめまいがしそうだった。理由はわからない。だけど、その言葉は聞きたくなかった。
「なるほど。ですが、先ほども言いましたように、わたしと旦那様の結婚は国王陛下からの命令です。そんな簡単に別れられるとは思ってもおりません」
「すまない……君には他の縁談を用意すると、ユースタス王太子殿下もおっしゃっている」
 まさか、ここでユースタスの名を聞くことになるとは思ってもいなかった。彼もグルだというのか。
「特定の女性に対して、こんな気持ちになったのは生まれて初めてなんだ……」
「旦那様がお好きになられた方。どういった方かお聞きしてもよろしいでしょうか?」
 アンヌッカがそう尋ねたのは無意識だ。興味があったのかもしれないし、悔しさもあったのかもしれない。そして悔しいという感情が生まれたことにすら戸惑いを覚える。
「あぁ。それで君が納得してくれるのなら……。仕事で一緒になった女性だ。彼女は君と同じメリネ魔法研究所に所属している。だから君も知っている女性だ。古代文字に長けている……」
 アンヌッカは大きく目を瞬いた。心臓は先ほどよりも強くドキドキと鳴っている。
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