【電子書籍化】出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが~その好きな人って変装したわたしでは?
「お嬢様は……ではなく、奥様はもう少し怒ったほうがよいですよ」
「でもねぇ? ほら、最初にこの結婚に愛はないと宣言したような旦那様よ? それに、自分の結婚式すら欠席だなんて。考えてみたら、おかしくて……」
ふふふふと、アンヌッカは肩を小刻みにふるわせた。
「あ、奥様。動かないでください。今、鈎をはずしていますから」
「でも、お父様たちと食事をすませてきてよかったわね」
通いの使用人が一人きり。むしろ使用人というよりは、この屋敷の管理を任されている者なのではと思えてくる。
「そうですね。本当に、私がいてよかったと思いませんか?」
ストンとドレスが落ちた。コルセットも外されたアンヌッカは、動きやすく簡素なドレスに袖を通す。
「そうね、ありがとうヘレナ。こんなところにまでついてきてくれて」
ヘレナはドレスを手にして、衣装部屋へと向かう。
さて、どうしたものか。
この部屋を案内してくれたのは、帰ってしまった老齢の使用人だ。むしろ、管理人とでもいうべきか。だから、この屋敷の全貌はまだわからない。
「でもねぇ? ほら、最初にこの結婚に愛はないと宣言したような旦那様よ? それに、自分の結婚式すら欠席だなんて。考えてみたら、おかしくて……」
ふふふふと、アンヌッカは肩を小刻みにふるわせた。
「あ、奥様。動かないでください。今、鈎をはずしていますから」
「でも、お父様たちと食事をすませてきてよかったわね」
通いの使用人が一人きり。むしろ使用人というよりは、この屋敷の管理を任されている者なのではと思えてくる。
「そうですね。本当に、私がいてよかったと思いませんか?」
ストンとドレスが落ちた。コルセットも外されたアンヌッカは、動きやすく簡素なドレスに袖を通す。
「そうね、ありがとうヘレナ。こんなところにまでついてきてくれて」
ヘレナはドレスを手にして、衣装部屋へと向かう。
さて、どうしたものか。
この部屋を案内してくれたのは、帰ってしまった老齢の使用人だ。むしろ、管理人とでもいうべきか。だから、この屋敷の全貌はまだわからない。