【電子書籍化】出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが~その好きな人って変装したわたしでは?
「まったく。あなたが慌てて所長室へ向かったと聞いたから、私も急いでこちらに来たのよ」
「そうか。呼びに行く手間が省けてよかったよ」
 マーカスはプリシラに頭があがらない。
「それで、アンヌッカを軍のお研究所に派遣するため、カタリーナの名を借りたいということよね?」
「そうだ。話が早くて助かる。さすがプリシラだ」
「アンヌッカ以外の人物を派遣できないとなれば……やはり素性を隠す必要はあるわね。なによりも、マーレ夫人となってしまった今、アンヌッカの動きは見張られているのでしょう?」
「そうなんですか?」
 プリシラの言葉に、アンヌッカも思わず大きな声を出した。
「わからないけど、多分、そうではないの? というか、そのつもりでいなさい」
「わ、わかりました」
「つまり、アンヌッカがいくらカタリーナの名を借りたとしても、アンヌッカとしての痕跡を残せば、すぐに知られてしまうってことよ?」
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