【電子書籍化】出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが~その好きな人って変装したわたしでは?
アリスタが両手で握りしめていた書類を、上からさっと奪い取ったマーカスは、それに素早く視線を走らせた。すぐに彼の顔色も変わる。
「父さん。これを、アンに……? しかもこれ、陛下の名前で……つまり、王命?」
アンヌッカよりもマーカスのほうが動揺しているように見える。そうなれば、アンヌッカだって不安になってしまう。
「お兄様、わたしにもそれを見せていただけませんか?」
なによりもアンヌッカに届いた縁談なのだ。それを確認する権利はあるだろう。
マーカスは眉間に深くしわを刻みながら、渋々といった様子で書類をアンヌッカに手渡した。文字を追うたびに、彼女の紫眼が大きく開かれていく。
「このお相手の方……」
――ライオネル・マーレとの結婚を命じる。
書類にはそう書かれていた。このライオネル・マーレという相手がくせ者だ。
「そうだ。ライオネル・マーレ大佐だ」
アリスタは顔をあげず答えた。
大佐。それは国軍に属する軍人が使う階級だ。つまり、アンヌッカの相手は軍人。
「父さん。これを、アンに……? しかもこれ、陛下の名前で……つまり、王命?」
アンヌッカよりもマーカスのほうが動揺しているように見える。そうなれば、アンヌッカだって不安になってしまう。
「お兄様、わたしにもそれを見せていただけませんか?」
なによりもアンヌッカに届いた縁談なのだ。それを確認する権利はあるだろう。
マーカスは眉間に深くしわを刻みながら、渋々といった様子で書類をアンヌッカに手渡した。文字を追うたびに、彼女の紫眼が大きく開かれていく。
「このお相手の方……」
――ライオネル・マーレとの結婚を命じる。
書類にはそう書かれていた。このライオネル・マーレという相手がくせ者だ。
「そうだ。ライオネル・マーレ大佐だ」
アリスタは顔をあげず答えた。
大佐。それは国軍に属する軍人が使う階級だ。つまり、アンヌッカの相手は軍人。