【電子書籍化】出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが~その好きな人って変装したわたしでは?
「それで? 君は何を騒いでいたのかな? 外まで聞こえるくらいに。ここは会議室。話し合う場であって、怒鳴り合う場ではないはずだ」
 先ほどまで半べそをかきそうだった隊員の一人は、ユースタスが味方だと悟ったのか、水を得た魚のようにいきいきし始めた。
「は、はい。私のほうから報告してもよろしいでしょうか」
 そう言って手をあげたのは、軍の魔法研究部門に所属する隊員の一人。剣術は人並み以下だが、頭が切れることもあり研究部門に配属した。
「君は……その制服から察するに研究部門の人間だね」
「は、はい。魔法研究部門の第一チームのチーム長、リダーク少尉です。ゾフレ地区の魔導書の解析を担当しております。ですが、古代文字で書かれており、我々だけでは解読が難しいため、メリネ魔法研究所の力をお借りしたいと、そう進言したところであります」
「ふ~ん。それって、自分たちが無能だって言っていることになるんだけど、それで合ってる?」
 リダークの言葉を湾曲してとらえれば、そう解釈もできるだろう。こういったところが、ユースタスを敵に回したくないところでもある。
「は、はい……我々の力不足で申し訳ございません」
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